vol.15 イロハで得たもの?
- 2020年04月03日
- 所長の学び
イロハニトイロが開所され、3年目に突入しました。
多くの人の力をお借りして進んでこられた2年間だと思っています。
本当にありがとうございます。
2年を終えたイロハニトイロですが、まだまだ工賃は安いし、設備も整っていないし、不十分で未熟なことばかりです。
国からは工賃アップを求められ、しっかりと工賃を生み出せる仕事環境を作ることを求められています。
しかし
それも十分に達成できていません。
それなのに、現在26名の方が通ってくださっており、少しずつ仲間も増えていっています。
週1回来るか来ないかの方も、辞めることなく変わらず通ってくださっています。
イロハに来ても1時間しかいないのに、決まった日に必ず来てくださる方もいます。
長期間休んでいても、「やめたくない」「生活環境が整ったら、もう一度通い始める」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
うーーーん。
イロハの何がいいんだろう?
当然僕たちは、これが「就労支援だ」という考えを持って、自分たちの信念のもと運営しているわけですが、実際利用してくださっている方々にどのような影響を与えているのかはわかりません。
そこで先月、「イロハ大会議」と称した全体ミーティングを初開催したんです。
いつもの机を端に寄せて、床にカーペットを敷いて、輪になってみんなでいろんなことを話したんです。
実は、イロハではミーティングの時間がないんです。
開所当初は、月に一回ミーティングの時間を設けていました。
イロハをどのように運営していくかメンバーの意見をしっかりと取り入れていこう、
みんなでこの事業所を育てていこうという思いがあったからです。
しかし、そのミーティングもメンバーのある指摘から中止することにしたのです。
それは、
「ミーティング開いて、利用者みんなの意見を聞いているように思っているのはスタッフだけ。私たちはやっぱり本音は言えなくて、その場の空気や意見に合わせてしまっている。そんなミーティングに出たいとは思わない。」
というものでした。
気持ちよく意見に賛同してくれていた方たちにも、そんな気持ちがあるのか尋ねてみると
「実は、そうです。私も我慢して本当の気持ちは言っていないです。」
と教えていただきました。
かしこまって、意見を言え、と言われると状況は緊張して本音が言えなくなってしまうというのです。
そんなミーティングに何の意味もない。
ただのスタッフの満足だけのものだ。
そう思い、ミーティングをすることをやめました。(これは大きな学びでしたね)
だからイロハニトイロにはミーティングの時間はあえて作ってなかったんです。
本音が言えるのは、普段の会話だったりお喋りしているリラックスしている時間だったりします。
だから「日々の関わりを大切にしよう」、というのがイロハのスタイルになりました。
そうやって、イロハは利用しているメンバーの方々の意見を取り入れながらこれまで進んできたのです。
そして2年目を終える頃になり、人間関係も深まってきて、普段から深い話もできるようになってきました。
今ならミーティングをしても意見が言い合えるのではないか?
そう思い、「イロハ大会議」を開催したのです。
みんなが集まってのミーティングでないと話せない事もやっぱりあります。
・工賃の算出の仕方について
・仕事の取り組み方について
・この事業所のあるべき姿
などです。
実際開催してみると、いろんな意見が出て話が尽きず、
半日で終わるつもりが全員の希望で午後も延長することに!
結局一日ミーティングの日になっちゃいました!
そんなに話ができる、意見を言い合える関係が出来ている事に僕はとても感動したのです。
そしていい機会です。
みんなはイロハニトイロに来て何を得たと感じているのか、正面切って聞いてみようと僕は思ったのです。
僕たち(スタッフ)が意図したものと違う影響を与えているのか、
あるいは意図したものがきちんと伝わっているのか、
はたまた、思いもよらないことを得ているのか?
とっても興味があったのです。
そこで出てきた意見を以下に公開したいと思います(話してくださった内容をまとめたものです)
⇓
<イロハで得たもの>
● 昔の考え方と今とは違っている。今みたいに人前で話すとか挨拶もまともに出来ていなかった。ここに来て自分の話を聴いてもらえるから、安心して自分の気持ちが言えるようになった。
● 今までは、自分を否定して人から逃げていた。でも今はやっと普通の人になれたの
かなと思う。言いたいことも言わせてもらっている。相手の言葉も自分の為に言ってくれていると今は感じられるようになった。
● 一番得たと思うことは「自分を許す」ことができたこと。全てにおいて人の評価を気にしていた自分が、イロハに来てダメな自分も受け入れてくれたことが良かった。
● 評価も人の評価じゃなく自分で評価するものだと思う。自分の決めた目標に一歩で
も近づけたらいいんじゃないかなと思う。
● 最初は週3日だったが、現在はほぼ毎日来られるようになった。以前は、休むことに罪悪感でいっぱいになっていたが、今はちゃんと休めるようになった。休むことが「自分を大事にすること」ということを学んだ。前提に「自分を大事にする」という気持ちがあるから休める。だから続けて来られるようになった。
● もう昔みたいに誰とも喋らない日があるとか引きこもりたくない、と思っている。昔の生活に戻りたくない。
● 以前は嫌な事から逃げるほうをとっていたから事業所もすぐに辞めていたが、今は
不平不満を言いながらもイロハに来られているのは居心地がいいからなんだろうと思う。
● 逃げずに本音をぶつけられる。自分が納得がいくまで話をしてくれることが嬉しい。
● 家でできなかった、欲しかったものが全部ここにある。あったかいなって思う。
● 今は嫌だと感じる事や傷つく事も言葉にして伝えられるようになった。
● 家にいるよりここにいると安心する。安らげる。イロハでは何もしていないとしても嫌なことを考えないでいられる。
● 似たような病気や境遇を持っている人と出逢って、大袈裟かもしれないが家族が増えたような、そんな仲間意識が芽生えた。
● 今まではどこに行ってもしんどい人は絶対一人はいるからと思っていて、それをどうやって耐えるかを考えていた。一生懸命自分を守っていた。そんな中イロハに来てみて耐えなくていいんだと学んだ。自分にとっても他の人にとっても居心地がいい場所なんだと思った。
● 正直あまり人に興味がなかったが、今凄い興味を持つようになっていて、それが凄
いと感じていて、考え方が変わってきている。
● 自分のこと好きじゃなかったり、まだまだ自信もないけど休みたいときに「休ませてもらえてありがとう」と素直に思え、気持ちよく休めるようになった。
これで全部ではありません。
改めてこうやって尋ねてみると、こんなことを感じて下さっていたのかと、勉強になりました。
そしてもちろん、僕の心をとても温かくし、「うん、大丈夫だ。このまま進んでいこう!」と大きな安心を与えてくれたのです。
そして、そして、
このイロハニトイロという場所は皆さんの力でちゃんと育っていると確信を持てました!
というように、とっても素敵な「イロハ大会議」になりました。
参加してくれた方々も、「良かった」「またやりたい」という思いを持ってくださったようです。
3年目ももっともっと問題だらけで、失敗だらけ、間違いだらけ、
でも生きていて楽しいよねと笑っていられる、そんな事業所でありたいと思います。